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色はにほへ都

その八十二 師

2012年2月4日号掲載

税理士、会計士、兵士、戦士、介護士、保育士、看護師、医師、教師、漁師、猟師、占い師…

これらの職業における字面を観察してみると、「士」と「師」が使い分けられているのにお気づきのこととおもいます。

以前、介護師は「介護士」と書かれていました。士は元来、男性を表すために、男女共同参画の視点から、一般には「介護師」が使われるようになっています。

「士女」と書くと、これは男女をいう言葉になります。士の字形は象形でいうと、鉞(まさかり)の形を表し、王に仕えた身分を表します。

一方、「師」の字形は、軍が出兵する際、祖霊を祀(まつ)るために肉を備え祷(いの)る形。備える肉は、 肉(しんにく)とよばれ、それを動物から切り取り、祭祀をする人物を師とよんだのです。

要は、士は身分・階級・役柄、そうして男性を表し、師は祭祀に関わる職種を表していたのです。

この二つからわかるのは、士は、一般に人間の能力をもってすれば立ち向かうことのできる課題を扱う職につくということ。一方、師は、人間の力ではいかんともしがたい未知なる力によって支配されている職種をいうのに使われます。確かに、占い師も、漁師も、時の運や大自然という人間の力ではいかんともしがたい力が常に目の前の行為に関与します。人間の生命を扱う医師も、いくら医学が発達したとはいえ、まだまだ人間の命は思い通りにはなりません。

ところで教師という職種をどう考えればいいのでしょうか。前述の士の意味を当てはめて考えるなら、人が人を説き教える職業なら教士でもいいような気もします。しかし教士という言葉は、丈術、なぎなたなどの武道の段位に与えられる呼称以外は、見かけることはありません。

一つの考え方は、肉を使って祭祀を与った役職の一部が、そのまま今でいう教師の職に就いていったとする説。宣教師という言葉から推察されるように、教師は祭祀や宗教とも深く結び付いています。

もう一つの解釈は、人が人と関わることは、自然と関わるより、さらに困難を伴うことで、よって師の文字を使うのだと解釈する。確かに、人と人との関係づくりが、いちばんむずかしいのだと経験はそう教えるのです。

平野雅彦さん

塾長:平野雅彦さん

日々更新されるホームページ「平野雅彦なら、こう考える」も好評。アートシーンから教育現場まで、ジャンルを超えた知を編集し続ける。広告賞多数。静岡大学人文学部客員教授。

バックナンバー

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