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色はにほへ都その四十六 舟遊び2009年3月28日号掲載
花は桜木、人は武士。どうでしょう、この原稿がみなさまのお目に触れるころには、既に桜の花が散ってしまっているかもしれません。後の祭り、六日の菖蒲、十日の菊といったところでしょうか。野暮ですねぇ。 いまでこそ桜といえばそのほとんどがソメイヨシノですが、江戸の桜といえば遠く山々に霞がかかったように咲く薄紅色の山桜でした。 もちろん山桜にもいろいろな種類があります。なかでもゴシンザクラやコノハナザクラなどは、その花弁が八重咲きで、とても豪快で美しい。 とにかく江戸の山桜には品がある。思いつくままに挙げてみますと、品川の御殿山、王子の飛鳥山、向島の大川堤といったところでしょうか。いやいや、ソメイヨシノでも隅田川沿いの満開の桜がとにかくすばらしいとおっしゃる方も多いでしょう。 昔から、隅田川沿いの花見は普通の花見とはちょっと趣が違っていて、屋形舟から眺めるというのが酔狂の定石でした。 柳橋周辺には舟宿や料亭が甍を争っていました。いまでもいろいろな舟宿が軒を連ねていますが、わたしはなんといっても、神田川が隅田川に注ぎ込む際にある小松屋という舟宿の御座舟が大のお気に入りです。朱塗りの舟体が、桜の色と相まって、水面に映り込む舟影がとてもかわいらしく見えるのです。それはまるで花筏(はないかだ)のようです。 さて、舟に乗り込むと致しましょう。きっと佃煮のいい匂いがしてくるはずです。都会の喧噪が少し耳障りなら、障子を引けばいいのですが、何と言っても外は満開の桜。昔の水戸邸や安田邸の桜を、お猪口を片手に眺めます。水鳥(すいちょう)が頂けない方でも、桜餅を口に運びながら、絢爛豪華な舟遊びに興じるのもいいでしょう。そうして時間があれば、向島で舟をもやいます。 舟遊びといえば、夏は隅田川の花火見物、秋はお月見、冬は雪見酒といったところでしょうか。 おやおや、すっかり、いつもとは趣の違う文章になってしまいました。 桜は、「サ+クラ」で、サは、五月雨や早苗のサと同じで、霊力を表す言葉。どうやら、この霊にやられてしまったようです。 桜花散りぬる風のなごりには 水なき空に波ぞたちける(紀貫之)
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