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色はにほへ都その六十五 呪2010年7月24日号掲載
「呪い」と書いて「のろい」、あるいは、「まじない」と読みます。そのときに、どちらを選択するかは前後の文脈によるでしょう。 ところで「呪」は、なぜ口に兄と書くのでしょう。 実は、兄という字は、頭の上に、サイという呪術に使う器を乗せている人のかたちで、神を祀る人の意。口の字は、その器であるサイの意味です。この神事を担当したのが、兄弟のなかでも長兄であったことに由来します。 ちなみに「祝」の兄の字も同じ意味で、示偏は神を祀るときに使う祀卓のかたちです。 呪詛(じゅそ)の「詛」ものろいと読みますが、こちらは言を積み重ねて(且)、祈ること。 他にも、阻害の「阻」は、石を積み重ねて邪魔をすることで、「俎」は神に供する肉を積み重ねたかたちです。いずれも呪術に関係した言葉です。 まじないは以下の三つに大別されます。 まずは、子宝祈願や豊穣など、対象を増やすためのもの。次に、災難を取り除く儀式。そうして相手に厄を加える術。 ところで、まじないにはどのようなものがあるのでしょう。地域や時代によっても差がありますが、つまはじきというまじないをみてみましょう。 漢字では爪弾きと書きます。人差し指か中指の先を親指の腹にあて、強くはじいて音を立てる行為のことです。「弾指」(だんし)ともいいますが、この音には邪悪なものから身を守る意味があるのです。 紀貫之に『土佐日記』がありますが、その廿七日(はつかあまりなぬか)にこんな下りを見つけました。 ふくかぜのたえぬかぎりしたちくればなみぢはいとゞはるけかりけりひひとひ、かぜやまず。つまはじきしてねぬ。」(『日本古典文學大系』20岩波書店)。風が強くて船出ができず、都への波路を嘆きながら、つまはじきのまじないをして寝ようとしているようすが描かれています。 「蠱る」は「まじこ・る」と読みます。今ではあまり遣われない言葉ですが、これは呪術にかけられることをいいます。「蠱」は器に虫(蟲)を入れ、フタをして共食いさせること。そうして巫蠱(ふこ)といって、生き残った虫の毒気で相手にのろいをかけることなのです。物凄い発想ですね。 蠱惑(こわく)といえば、迷わし乱すこと。小悪魔とは違いますよ。
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