| 左の写真を見て、あ〜懐かしい!と思うのは、おそらく30代以上の方。鯛や果物をかたどったこの砂糖菓子の名は金華糖、実は今ではほとんど作られていない。ほんの十数年前までは、雛菓子の定番として、お菓子屋さんの店先に、篭盛りされて並んだものだった。
材料は砂糖だけとシンプルなのに、作るのはかなり手間がかかる。ひょいと出来るものじゃない。まず、砂糖を煮る。透明になったら今度は冷やしながら砂糖に戻し、さらに再び火にかけて煮る。その後、木型に流し込んでからまた鍋に戻す。木型に流し込んだ砂糖が冷えたら木型からはずし、せいろで乾燥させて、ようやく色付けだ。砂糖の冷まし加減も色付けも、熟練の技がなければ台なしになる。
「家族総出で夜中までかかって作ってました。この時期になると、今でも、あっ、両親の手伝いしなくちゃと、ふっと思うことがあるんです」と、井澤順一さん。静岡市で金華糖を作っていた金華堂の息子さんだ。13年前にお父様が亡くなってから、店もたたんだ。木型は残っているものの、金華糖づくりを継ぐ人はいない。
それにしてもなぜ雛祭りに?と聞けば、お祖父さんの代に、とっても有能なアイデアマンがいて、雛祭りには金華糖!とセールスし、一気に広まったのだとか。なるほど、バレンタインにはチョコレート!クリスマスにはケーキ!の販促と同じだ。金華堂では、静岡市内だけでなく藤枝方面の菓子屋にまで配達していたという。
金華糖の発祥は、はるか江戸時代にさかのぼる。金沢では今でも全国に自慢する伝統銘菓の一つだ。あちらではお嫁さんの実家が、嫁ぎ先にお祝として持参する習わしがあり、お値段も立派。一方、佐賀県の唐津にある小さなお菓子屋さんでは、雛祭りに限らずささやかに作り続けているという。お菓子は、作る名人と、売る名人、そしてそれを愛する人たちがいて初めて生きのびる。
静岡県内では島田市のお菓子屋さんが作っているとか。もし、お近くで金華糖を見つけたら、ぜひ編集部までご一報を。だって、こんなに可愛いお菓子、本当に消えてしまったら、やっぱりさみしいもの。
取材協力
井澤順一さん・佐倉屋(焼津市)ほか
*金華糖にまつわるエピソードもいろいろ!
井澤順一さんのホームページ(タイトル/老舗金華堂)
http://www1.neweb.ne.jp/wb/daxok/kinkadou.htm
(02/03/02) |
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| ▲金沢の金華糖の篭盛り。鯛やはまぐり、ぶどうなど、合わせ型で裏表どちらも形作ってあり、ずしりと重い。静岡ではオモテ側だけのお面のような軽い作りで、ぱりんと割れる食べやすいものだった |
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| ▲佐賀県唐津の金華糖。こちらは手の平にちょこりと乗る愛らしいもの。しかもガラス細工のように美しくて素朴 |
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