バタークリームのケーキが町からどんどん消えていったのは、いつごろからだろうか。
今回のお菓子探検は、焼津市に昭和55年オープン以来、バタークリームのケーキを作り続けて評判の「パティスリー・ケンジョー」。ご登場いただいた代表選手は、鼻をクッと上にした、負けん気いっぱいのご覧の「たぬき」である。
「私たちの世代ではやっぱりケーキといえばバタークリームなんですよね」と、還暦をちょっと過ぎたご主人の見城茂男さん。10代でこの世界に入り、今はない静岡の洋菓子店トロイカへ。この道46年になる。お客の中には、バタークリームのコクが好きという純粋なファン、生クリームがどうも苦手でという人、トロイカのたぬきが懐かしくて、という人もいる。見城さんによれば、東京ではバタークリームのケーキが見直され始め、ぼつぼつと出すところが出てきたらしい。
区画整理で店の前の道は通行量がぐんと減った。道順を説明するにもわかりにくく、お客の足を遠のかせてしまった。「時代遅れのケーキ屋だし、この機会にやめちゃおうかとも思った。でもお客さんたちや同業者に励まされて」。
お店に並ぶのはケーキといえども生クリームやフルーツをたっぷり使った流行のケーキとは、違う顔。「スイーツなんて呼ばないでくれよ」とたぬきが踏ん張っている。
取材協力
店名/パティスリー ケンジョー
住所/焼津市道原1179-2
営業時間/
午前9時〜午後8時、木曜定休(祝日・正月などは営業)
TEL:054(623)3133
(06/05/13号掲載)
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▲正面のたぬき1個210円。後ろに控えたワンちゃんやバラがデコレーションされたアントルメ各種は2個1050円。ほかにプチフールの詰め合わせなど、もちろんすべてバタークリーム

▲一本焼きのバウムクーヘンも人気もの。左が通常サイズ、右はなんと直径21cm。ずしりと重いのは卵とバターがよそよりずっとたっぷりだから
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