色・豊かなまち静岡

 

 静岡市をもっとステキにしたいと、昨年「リビング静岡」の創刊25周年記念として立ち上げたプロジェクトで、社会人と学生チームの発案のもとに生み出した冠ことば「色・豊かなまち静岡」。
いよいよ今年度は、このことばを使っての、静岡市の魅力倍増計画に着手します! 中には、すでに始まっている動きも。
冠ことばは静岡を変えることができるのか。現状と可能性に迫ります。    
(小林かおり記者)


 
2007年05月19日号
 
 
 
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(1)駿河湾でしか漁獲されない、海の宝石ともいわれるサクラエビ。静岡がシェア100%を誇ります
(2)静岡市は日本有数の生産量を誇るバラの産地。特に清水地区では約110品種を栽培
(3)三大美港である清水港や三大松原の一つに数えられている三保など、海の眺めも見事
(4)スーパーカーやミニ四駆などのヒット商品を生みだし、世界的にも注目されるプラモデルの産地、静岡。全国一の生産量を誇ります
(5)原生林、高山植物…。南アルプスには3000mを超す山が13座あり、そのうち10座が静岡市に
(6)家康公も好んだといわれる静岡のお茶。心和む静岡の緑といえばお茶畑の色。お茶づくりに適した気候と高い生産技術によって、品質、量ともに日本一のお茶の産地となっています
(7)静岡のみかんは「青島温州」という優良品種を主力に生産。平成16年の県産出額は全国1位に
(8)駿河湾を望む久能海岸沿いは別名「いちご海岸通り」といわれ、主流の「章姫」や注目の「紅ほっぺ」などが味わえます。静岡は全国でも有数のイチゴ大国
(9)平成4年から開催されている大道芸の世界コンテスト「大道芸ワールドカップin静岡」。世界中から集まったパフォーマーたちが街中をステージに腕を競い合います
(10)日本の観光百選、国の名勝、県立自然公園に指定された「日本平」。頂上からは正面に富士山、伊豆半島、南アルプス、眼下には静岡市街、清水港、駿河湾と雄大な景色が広がります

 

▲加藤正明さん
静岡市のシティセールスを展開する都市経営課課長。「今回の冠ことばの最重要課題は、市民に浸透させること。市民が主体となりイメージを固めていけば、行政が利用するということも考えられます」


▲望月正敏さん
静岡観光コンベンション協会常務理事。「静岡の観光パンフレットでは、これまでさまざまなサブタイトルをつけてきました。そろそろ静岡を表わす統一感のあることばが必要だと感じていました」




▲久保田香里さん
静岡デザイン専門学校校長。「耳から聞いた言葉は、それを頭の中で映像に置き換えるとイメージを掴みやすい。色・豊かなまちがどんな色や形や…なのか具体的にイメージできる仕掛けがこれから必要ですね」



▲平野雅彦さん
情報意匠研究所所長、情報プランナー、静岡大学非常勤講師。「静岡・冠ことば」の創生段階からプロジェクトを強力に支援。「冠ことばを市民に浸透させるには、このことばで今後、どういうことをやっていくのかを具体的に示すことが大切です」



▲村井裕さん
冠ことばのプロジェクトメンバーであり、今後の“冠ことば”の活用推進に向けて委員会を立ち上げ活動。「冠ことばの浸透には、積極的で継続的な働きかけが必要だと再認識。多分野の人を巻き込み、定着のきっかけづくりをしていきたいです」


 

《 シティーセールスに取り組む静岡市 》
政令市移行から3年目を迎えた静岡市は、昨年3月蒲原町と合併し、さらなる飛躍に向けてまちづくりを行っています。その一環として、静岡市が誇る数多くの地域資源を生かしシティーセールスを推進中。これは単に都市を売り込むPR活動ではなく、まちづくりの観点から市内外に働きかけ、ヒト、モノ、カネ、情報などを呼び込み経済活動を活発化し、外からの活力を取り込み、まちの魅力を向上させようという一連の戦略的活動です。

 

冠ことばは、静岡を変えるか?
“色”活用の可能性とは

 冠ことば「色・豊かなまち静岡」を発表して5カ月。この冠ことばを十分に生かし、`色aで静岡の特性や個性をアピールしていくには、今後どのような展開が考えられるのでしょう? そこで魅力倍増計画のスタートにあたり、静岡市の発展に大きく関わる人たちを招き、冠ことば活用の可能性を探ることにしました。

 

集まったのは、静岡の応援団
それぞれの仕事と色の接点は?

  今回の冠ことばの可能性を探る座談会に参加していただいたのは、静岡市の都市経営課長・加藤正明さん、静岡観光コンベンション協会常務理事・望月正敏さん、静岡デザイン専門学校校長・久保田香里さん。プロジェクトメンバーからは、村井裕さんが参加。情報プランナーとして、プロジェクトを支援する平野雅彦さんをコーディネーターに、意見交換が始まりました。

平野: まず、プロジェクトメンバーの村井さんから、冠ことばの理想の展開について、思いを語ってください。
村井: 私たちは、これからの地域の差別化のために地域から発信する手段として、冠ことばは不可欠だと考えています。そこで静岡の特色を明確にするものとして`色aに着目した冠ことばを考えました。今後の展開としては、多くの人が冠ことばを活用することが理想で、それによって市のウチ(内)の人にはまちの魅力の再発見を、ソト(外)の人には静岡の良さを伝えたいです。
平野: 村井さんは単純にモノの色というだけでなく、心のありようや時代性をも色に託して表現したいと考えているようですね。では続いて、三人の方にそれぞれの仕事と、その中で`色aとの接点がありそうな部分を教えていただけますか。
加藤: 私のいる都市経営課は、静岡市のシティーセールスを展開しています。行政はとかく縦割り業務になりがちですが、副市長と関係局長で構成するシティーセールス推進委員会を核に、複数の部局を連携するという、今までにない横のつながりを重視した活動をしてまいります。ところで静岡市にはまだ、決まった冠ことばがないのです。今後は「色・豊かなまち静岡」も候補の一つとして、検討していくことになるでしょう。市でも、3区のテーマカラーを決めるなど、色には注目しています。たとえば、市職員の名刺や封筒のデザインを、色で統一するなど工夫して、セールスポイントにするといったやり方も考えられます。
望月: 私は、この春に観光協会とコンベンションビューローが合併してできた、財団法人・静岡観光コンベンション協会で、観光の仕事をしています。有名な仙台の“杜の都”という冠ことばは、この一言で、まちの豊かな自然や環境への取り組み、都市計画の理念までも伝えてくる。静岡にもぜひ、そんな冠ことばが欲しいですね。そこで実は早速、この春発行の静岡駅周辺便利情報「ずらずらマップ」の表紙に、冠ことば「色・豊かなまち静岡」を採用しました。葵区のガイドなので、区のテーマカラーである緑色を基調に制作してあります。今後は、この冠ことばをぜひ認知させていきたいですね。とはいっても、あまり急ぎすぎず、じっくりとしみこませることが大切だと思います。
久保田: 私どもの静岡デザイン専門学校では、ファッションやデザインでまちに根付く若者を育てています。イメージを、人に伝えるための形にすることが将来の仕事です。そこで在学中から企業やまちづくりにかかわる機会をできるだけもっています。最近では大御所四百年祭の「お茶のキャラバン隊」を企画。大道芸では、学生がボランティアに参加する中からポスターデザインを制作し、採用されています。そんな展開をしていく中で、大きな効果をあげるものが“色”なんです。伝馬町ではまちの活性化を目的に昨年から、「バナーコンテスト」を実施し、学生が作品を提供しています。昨年は、伝馬町のイメージを“藍色”というテーマカラーで表現しました。
平野: なるほど、皆さんそれぞれの立場で、静岡の活性化のために“色・豊かな”活動をされているわけですね。

冠ことばを、どう使用するか
あらゆるシーンで色を意識する

平野: ではいよいよ、冠ことばの今後の展開について考えていくわけですが、村井さんたちは今後、冠ことばの活用推進委員会として活動していくことになりますね。何か、展開案があれば教えてください。
村井: 私はまず、冠ことばを使って地域が元気になるような、静岡の魅力再発見、地域のブランド再確認をやってみたいです。地域ブランドには、“行ってみたい”観光地ブランドや“買ってみたい”特産品ブランドがありますが、私は“住んでみたい”と思わせる暮らしブランドにも注目してみたいと思います。
望月: それは大切なことだと思いますよ。観光の仕事をしていると、静岡の人が、静岡の良さを知らないのではないかと思うことがよくあります。
加藤: シティーセールス活動の共通理念でも、今まで当たり前だと思ってきた文化や歴史、自然などの地域資源を顕在化させ、そこから新しい資源を創ることを第一に考えています。
平野: 村井さん、何か一つ具体的な案はありませんか?
村井: たとえば、東京では山手線や総武線などの電車に色をつけ、緑の電車や黄色の電車などと意識しています。そこで静岡市内の公共交通機関の駅に色をつけて表してみたらどうでしょうか。駅の使いやすさ、大切さ、ルールやマナー、駅への愛着などを色で表現する。
平野: 色とうまく結びつけて、駅で周辺の観光情報を流したり、静岡デザイン専門学校の学生さんがチケットにデザインをほどこしたり。周辺の店がネットワークをつくり、色をテーマに結びついてくれれば、可能性はいっぱいありますね。
加藤: そうなると、今まで単なる通勤電車だったものが、観光電車になったりして。
平野: そう言いかえることで、電車への見方がまったく変わってしまいますね。一つの仕掛けが、大きな期待感につながっていく。最近では「まちの駅」なども誕生していますから、そちらへの応用もできそうですね。
久保田: 仕掛けという言葉が出ましたが、みんながそれぞれ“自分の静岡の好きな色”を持ち寄る企画があったら、いろいろな色が集まっておもしろいでしょうね。
望月: 人の数だけ、色がある。“1色に決めつけない楽しさ”ですね。「色・豊かなまち静岡」という冠ことばでは、食品や産業を一つの色に限定して表現してしまいがちですが、一歩踏み込んで、多彩な色の選択の中に人間の心の自由さ、豊かさが表現できそうです。
加藤: しかしイベントのありようによっては、1色のテーマカラーを決めた方が効果的ということもありますね。
平野: つまり自由な色を表現したり、テーマカラーを決めたり、活用法はいろいろありますが大事なのは“色にこだわる”ということなんです。

 

行政・観光・デザインの世界で
冠ことばの浸透を模索する
平野: ところで今日は、行政・観光・デザインの分野から三人の方に来ていただいたわけですから、それぞれの立場から冠ことば活用の可能性を探ってみたいのですが。最初に久保田さん、伝えたいイメージを具体的な形にするためのコツとは、どんなものですか。
久保田: 私たちはまず、社会の中で始まり出しそうな動きをとらえ、自分たちでテーマ設定して素材を調べることから始めます。大御所四百年祭の家康、イチゴの紅ほっぺ…。そして何をどう社会に伝えていくのか、表現していくのか、今すぐできるところからやる。形にできるものからしています。
平野: つまり好機を逃さないということですね。
加藤: それはシティーセールスの理念でも同じことです。時代の変化に乗り、適切なタイミングで実行することが大切。
久保田: ところで、本校の今年度の卒業研究では、この「色・豊かなまち静岡」の冠ことばを意識して、七つの色による“静岡ブランドを考えよう”というテーマに取り組むことになったんですよ。静岡の地場産業や伝統工芸などのイメージを、色とからめて表現する。シーンごとの色で、地元のブランドをつくろうという取り組みです。
加藤: それは、おもしろい。そういう企画は、なかなか行政では考えつかないです。
平野: こういう市民主導の、市民が種をまく活動が、シティーセールスや観光の活性化につながる、ということもあるのではないですか?
加藤: もちろんあります。というより、これからのまちづくりは、むしろ市民が主役。市では「静岡市自治基本条例」を制定していますが、この条例は、まちづくりは、市民と行政との協働で実現するという理念を掲げています。冠ことばにしても、行政が決めるというものではない。多くの市民がまず認知することが大事なんですよ。ところで、今年の10月11・12日に静岡市では全国の市長や議員など約2000人を招き、「全国都市問題会議」を開催します。大勢の人を案内するのに、案内板にどのような色を利用しようか、現在検討しているところです。会議のあとには観光案内や、地場産業の紹介もします。シティーセールスの理念の一つは、“もてなしの心”を大切にすることですからね。
村井: それは冠ことばの活用の場として、大きなチャンスにもなります。
望月: 政令指定都市として、これからますます全国大会や国際大会の誘致が盛んになるでしょう。静岡観光コンベンション協会でも、全国から訪れる人に、会議だけでなくまちの魅力を知ってもらうための“静岡流のもてなし”を実現しようとしています。
平野: どうやら冠ことばは、そうした企画にあわせた活用法を考えていく必要がありそうですね。今日は、いろいろな分野の方々から有意義な意見をお聞きしました。推進委員会は今後も、多分野の人に活用のヒントを聞く機会をつくること、その意見をコーディネートしていく役割があるようですね。
村井: そうですね。冠ことば定着に向けて、がんばっていきたいと思います。色をテーマにしたイベントの開催なども考えたい。とりあえず、10月の静岡市の会議にあわせて、冠ことば活用の企画を出したいですね。こうして貴重なご意見をいただいた皆さんにも、ひきつづき応援をお願いできれば。ぜひ、よろしくお願いします。

 


約8万人を迎える静岡ホビーショーの
ウエルカムボードに

「静岡の各業界が自分の色をアピールすべき」
タミヤ 代表取締役社長 田宮俊作さん 
  日本一の模型見本市として世界の注目を集める「第46回静岡ホビーショー」が現在、ツインメッセ静岡で開催中です。5月19日(土)・20日(日)には約8万人が訪れ、一般公開も行われます。そして人々を迎えるウエルカムボードには、「色・豊かなまち静岡」の文字が掲げられています。タミヤ代表取締役社長の田宮俊作さんに、シティーセールスへのご意見をお聞きしました。
「今回の冠ことばの取り組みは、すばらしい提案です。静岡市は無色透明の街でしたからね。私はこの冠ことばの“色”は特定の色ではなく、住む人が醸し出す多種多様な色ではないかと思います。もっとさまざまな業界ごとに、自分たちの色を発信していかねばならないのでは。静岡市には、さらに大きなコンベンションホールを建設し、ホビーショーとのコラボレーションで各業界の見本市をするなど、さまざまな提案をしていきたいと思っています。日本の中心に位置する静岡市の立地を生かし、外から人を呼ぶ仕掛けをしていかなければならないと感じますね」

 

 


観光客にアピール! この春発行の 「ずらずらマップ」「旅ナビ」に

「静岡の特色を上手に表現、機会をとらえて発信したい」
静岡観光コンベンション協会
事業誘客宣伝課課長 安池弘明さん
  静岡観光コンベンション協会では、この春に発行した静岡駅周辺ガイド「ずらずらマップ」(2万部)と、静岡の観光案内「旅ナビ」最新版(3万部)に、冠ことば「色・豊かなまち静岡」を掲載。新しくなった静岡駅の観光案内所をはじめ、静岡観光コンベンション協会(電電ビル2階)、静岡市観光課(清水庁舎内)で無料配布しています。同協会の安池弘明さんに今後の活用法をお聞きすると。
「このマップを作成するにあたって、静岡観光コンベンション協会として、今回の冠ことばを活用させていただきました。“色・豊か”は、海も山もあり、観光や歴史、グルメなどの要素に恵まれた静岡市をアピールできる、使い勝手のよいフレーズ。今後は、当協会発行の印刷物をはじめ、ラジオなどの放送媒体の取材時でも、できるかぎり使用したい。今後は特に、来静した人が街中で楽しむ観光マップに力をいれたいですね」

 

 


色で、静岡をブランド化! 冠ことばを研究に活用

静岡デザイン専門学校
プロダクトデザイン科 教諭 
森田みかさん
   冠ことば「色・豊かなまち静岡」の活用法を探るうえで、一つの魅力的な方法を提案してくれたのが、静岡デザイン専門学校の今年度の卒業研究、「色をテーマとした、地場産業のブランド化」。これは、静岡の伝統工芸、ホビー、静岡茶など七つの地場産業を、7種のシーンとテーマカラーでデザイン化することで、静岡ブランドを確立しようという、興味深い取り組みです。教諭の森田みかさんは、「今回の冠ことばは、いろんな要素をもつ静岡の特性を、デザインにとりこみやすい“色”というキーワードに表現した点で、とても使いやすいと感じています。地域の地場産業をデザインの力でブランド化する取り組みは、全国的な動き。静岡の産業は素材が豊富な反面、これまでデザインの力が及んでいなかった。デザインの視点から、静岡の活性化に提案をしたいですね」。学生たちは各産業への取材を進めることから始まり、9月には研究制作を完成させる予定。冠ことばの可能性を表わすためにも、学生たちの研究には今後も注目していきたいところです。

 



(07/05/19号掲載)


 

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