「ここからはきものをお脱ぎください」。病院の玄関にこんな貼り紙があったらあなたはどうしますか。「ここからは、きものをお脱ぎください。え、着物を? でもここは玄関だぞ」と不愉快になる方。あるいは「ここから、はきものをお脱ぎください。そうか、ここで靴を脱げばいいんだな」と理解される方。そう、この文章はまったく同じ言葉が並んでいるにもかかわらず、どこで区切るかによって意味がまったく違ってしまう例です。
そんなことは知っているよ、有名な成句じゃないか。ではそうおっしゃる方に質問いたします。
『紅葉』というだれも口ずさんできた学校唱歌を思い出してください。「♪秋の夕日に 照る山紅葉〜」
もしかするとあなたはこの歌を「照る山
紅葉」と歌っていませんか。「照る山+紅葉」という意味です。答えを先に云います。正解は「照る 山紅葉」なのです。すなわち「照る+山紅葉」で、照っているのは山ではなく、山紅葉なのです。これは山桜と同じ使い方ですね。
私は大丈夫。そういう方も周りに聞いてみてください。その多くが「照る山+紅葉」だと勘違いされていることに驚かれるでしょう。
先に参ります。
「五里霧中(ごりむちゅう)」。有名な四字熟語ですが、これはどこで区切りますか。「五里+夢中」でよろしいですか。正解は、「五里霧+中」。なぜならこの意味は、五里四方に広がる霧、その中を言い表しているからです。
では「間髪(かんはつ)を容れず」はいかがでしょうか。これは髪の毛一本入らない間という意味で「間、髪を容れず」と区切るのが正しい。
「綺羅星(きらほし)のごとく」はいかがでしょうか。綺羅というのは、美しい衣のことで、それが星のように輝いていることを云っています。よって正答は「綺羅、星のごとく」と区切ります。綺羅星なんて星はありませんよ。ご注意あれ。
さてもう一問。太平洋と大西洋、なぜ太平洋だけ太いという文字を使っているのでしょうか。
実は大西洋は中国から見たときにずっと西にある大海原という意味で、「大+西洋」。一方、太平洋は、おだやか(太平)な海という意味で「太平+洋」なのです。
どこで区切るかは重要な問題ですね。
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