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その二十五 すみません

 すみませんが、「すみません」についていっしょに考えていただけませんか。
 まず「すみません」は、実に多くの形容を持っているのが特徴です。思いつくままに挙げてみます。
 「相済みません」「申し訳ない」「申し訳がない」「失礼」「失敬」「不徳の致すところ」「忝(かたじけ)ない」「面目ない」「面目次第もない」「御免なさい」…。
 少し耳なれない言葉に「紺屋(こうや)の地震」という形容があります。これは言葉遊びの一種で、地震によって染め物に使う藍瓶が揺れて中の藍が澄まない意で、「相(藍)すみません」と洒落(しゃれ)ているのです。
 そもそも日本人は、自らの過ちを放っておくことを潔しとしませんでした。何かあればきちんと言葉を尽くしてわびたのです。そのために、おわびをする言葉をたくさん持っているのでしょう。
 おわびしても、おわびしても、まだ心の中で、ことがたやすく済んでいない状況で、そうして気持ちがすっきり澄んでいない様。したがって、「すみません」は「済みません」であり同時に「澄みません」なのです。
 ところで「すみません」ではなく「すいません」は、日常会話の中で、言いやすいように言葉が変化したいわゆる音便形です。平たく言えば訛(なまり)言葉なのです。
 音便形は他にもあって「こんにちは」が「こんちは」になったり、「さようなら」が「さいなら」「さよなら」になったりするのが代表的な例です。
 そうそう、「すみません」が関西にいくと「すんません」「すんまへん」に変化しますね。
 「すみません」の同義語の「恐れ入ります」というのは、謝罪の意味と「ありがとうございます」や「ご苦労様です」という思いを同時に表しているところが、日本語の興味深いところです。
 それからもう一つ「あやまる」にも注目してみましょう。
 「あやまる」は「あや」という言葉を語源とします。「怪しむ」「危うい」などがこの仲間です。
 更に重要なのが「人を殺(あや)める」という使い方の「あや」です。おだやかではありませんが、そこには「死んでおわびします」という覚悟や潔さが見え隠れします。
 さて、この「おわび」は茶の湯の「わび」にも通じるのですが、それはまたの機会に。


(08/04/19号掲載)


 

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