|
久能の海岸道路をクルマで走っていると、ビニールのイチゴをくるくる回しながら観光イチゴ狩りへどうですか、という“お誘いパフォーマンス”が次々と展開する。この「イチゴくるくる」には前から気になっていたが、やっぱりこれはキッチュだ。
まず、その中身は空気、実体はビニールにイチゴをプリントしたもの。これだけで実物の原寸サイズを拡大模造してしまうというキッチュの水増し技法に沿っており、これは、まぎれもなくキッチュだ。さらに、なにか不思議なおかしみがにじむ“くるくるパフォーマンス”だ。

|
| 久能の春の風物詩ともいえる「イチゴくるくる」。キレの良いパフォーマンスに思わず視線が釘付けに |
いったい、あの不思議なおかしみはなんだろう。キャラクターが電動式になって、型にはまった動きをただただ単純に続ける、という存在に仕掛けがありそうなのだが、それだけでもない。よく見ると、くるくるパフォーマンスにも年季の差がある。
違いは、やって来るクルマのスピードを見ながら、イチゴくるくるの回転速度とその半径を微妙に調節している点だ。家族連れやアベックと見るや、車道にイチゴビニールがはみ出るほど大きく回転させ、そのクルマが近づいてくると、回転半径を絞り回転数を上げてゆく。仕上げは「さあ、こっちへ入ってよー」とばかりに横振りアクション。この一連の流れはもう様式美に達している。
中世の申楽芸(さるがくげい)も、こういう大道の芸が始まりだったというが、世阿弥のいう美醜も善し悪しも区別がつかない「妙花風(みょうかふう)」という抜けきった芸域に達するとは、こういうものかもしれない。ただ、採りモノがビニールのイチゴであるがゆえに、見事キッチュに抜けきっているわけだ。
ところで、イチゴの語源は、「魚(いお)の、血(ち)のごとし」からといわれ、日本では、イチゴは血を連想させるものだったらしい。そうか、血のごとしモノを振り回すのだから「イチゴくるくる」には血が騒ぐわけだ。
|