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その二 「蒸す」と「結ぶ」

 いやはや、蒸しますね。特に静岡の気候はムシムシします。実はこの「蒸す」という言葉が、日本そのものをデザインしてきた重要な言葉であり、コンセプトそのものなのです。
  この「蒸す」という言葉は、目に見えないエネルギーが生まれてくる状態を表す言葉です。「苔(こけ)生(む)す」というときの「生す」と、「蒸す」は同じ源を持ちます。
  さらに言えば、この「蒸す」は「結ぶ」にもつながる。日本人にとって結ぶという行為は、特別な意味を持っていたに違いありません。それでなければ、結婚とか結納といったハレの日の言葉に「結」という文字を用いるはずがありません。
実は「むすび」は「むすひ」のことで、「産霊」とつづります。産霊とは天地・万物を産み出すという霊妙な神霊のことです。
 こう考えると、なぜ昔の武士が懐におむすびを忍ばせて戦場に赴いたのかも分かるような気がしませんか。きっと森羅万象をつかさどる神々を味方に付け、勝利を手中に収めたかったからに違いありません。
また『おむすびころりん』という昔話では、おむすびがモチーフになって主人公を不思議なネズミの世界へと誘っていますね。
 もう一つ例を挙げます。日本では、ひもを結ぶ時にできる結び目を「鬼の目」と呼んで、そこにはやはり強い力が発生しているとみました。プレゼントや着物の結び目、それから祝儀袋の水引など、結び目がいっぱい見られます。
 注意深く観察するとまだまだあります。縄文時代からなぜか我々のご先祖様は、結び目という文様を多用しています。江戸時代前期の陶工・野々村仁清という人物も好んで器に結び目文様を用いました。「器」とは「うつ=空」のことで空っぽのこと。空っぽだからこそ、そこへ未知なる産霊が降りてくるのです。
 そうそう、日本神話ではすべてを産み出す神を「タカミムスヒ」と呼びます。「豊葦原(とよあしはら)の瑞穂の国」と日本を呼んだように、もともと日本は瑞々しい国です。この瑞々しさが、すべてを産み落とした出発点なのです。

 


(06/07/29号掲載)


 

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