パソコンを使いだしてから、漢字が書けなくなった。そんな話をよく耳にします。出先で携帯電話のメールを辞書代わりに、書類や手紙を書いている人がいたり、あるいは電子辞書が飛ぶように売れている原因の一端は、こんなところにあるのかもしれません。
昭和56年に公布された常用漢字は1945字の字種(ちなみに戦後間もなく公布された当用漢字は1850字の字種)で、高等学校でこれらをすべて書け、音訓読みができるようになることが、国の基準で定められています。しかし困ったことに、わたしなどは、はなはだ自信がありません。告白するなら、なかでも漢字一字の訓読みは昔から大の苦手です。
ところで常用漢字の1945種が多いかどうか、わたしにはわかりませんが、例えば有名な孔子の言葉を集めた「論語」に使われている漢字はたかだか1512字種。なんと常用漢字より433字種も少ないのです。中国人ですら難解だという詩を数多くつくった杜甫でさえ、4300字種ほどの漢字を使っていたに過ぎません。
そもそも漢字は、縄文時代終りから弥生時代の初めころの花綵列島(かさいれっとう=この場合日本を指す)に入ってきて、それまでの話し言葉に次々に漢字を対応させていくという壮大なプロジェクトの中で生命を宿していきます。しかし、どうしても既存の漢字には当てはまらない場合もあり(実はここがすごいのですが)そこから産まれたのが、日本で誕生した漢字「国字」なのです。「畑」「辻」「峠」「榊」などがそうです。
さらに漢字は、仏教や美術などの影響を受けてカタチを多様化し、片仮名や平仮名を産み落としていきます。中国からやってきた漢字を「真名(まな)」と呼び、一方日本で生まれた文字は中国が真であるのに対して、あくまでも仮だということで「仮名」というのです。
ところで本家中国の漢字はどのように誕生したのでしょう。中国の神話によれば、古代中国の伝説上の人物・倉頡(そうけつ)が砂浜に付いた鳥の足跡をみて思いついたということです。ようするにこの鳥の足跡に、今の日本人は苦しめられていることになります。
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